IT Japan 2012 成長への挑戦

参加してきました。企業がITをどのように使っていけばいいのか、自社の発展にどのように活用していくかを議論するフォーラムでした。IT(情報技術)について思ったことをつらつら書きます。

ITには、いくつかの捕らえ方があると思います。
①業務の効率化
②付加価値の創造
③商品そのもの

①業務の効率化
紙、鉛筆、電卓、封筒。昔の事務作業で必要だった道具です。紙、鉛筆をPCに置き換え、また、入力数値を計算させ、その結果や文章をネットワーク上の人と共用する。通常、人手でやっていた作業で単純化できるものを技術で自動化する。人件費DOWN、速度(効率)UP。初期投資に見合う効果も、人の置き換えで換算出来る初期IT化時代はネコも杓子も導入一直線。

今は、すべての企業がIT機器とシステムをすでに導入済み。だから、全く新規というのはなくM&Aによるシステム統合、システム刷新が今はメイン。最初につくったシステムは時代の流れからズレて来ているけど、旧システムとの差分では費用対効果が不透明だからなかなか過去の資産を棚上げできない企業も多い。大規模に刷新するキャッシュがないからと、保守で財布の中身はジリ貧。

クラウドが進み、拡張性の優れたERPのパッケージが一通りそろうと、システムインテグレータのほとんどは失業の闇に葬られるかもしれない。今後の重要なプレーヤーは、セールスフォース・ドットオム。技術をドリブンしてきたものが、エンタープライズ系からコンシューマ系へシフトしたこの時代。コンシューマー系で生み出される新技術に信頼性のスパイスを加えて、時代の流れに沿って技術を生み出すことに成功した、現在の勝者。

②付加価値の創造
コマツがいい例。昔はブルドーザそのものを販売。今は、それらを効率よく管理するシステムが商品の周りにくっついて価値を高める。果物で言うと、ブルドーザは種、システムは果実。種がないと実は付かないが、もはや消費者は果実の味を楽しむことに価値を置いている時代でもある。

「もはやハードではない、ソフトの時代だ」と15年前に言われたことが現実となっている。ハードではお金が取れない、経済がまわらないということである。SamsungSonyは負けた、hundayにHondaが負けたといっているのは、彼ら韓国企業は、テレビや車などの「ハードで戦っていないから勝てる」のである。ハードに差別化要因がなければ、差別化出来ないと考えるのは間違いであり、何を商品と考えるのか、何が顧客を満足させられるのか、その本質が分からなかった日本の企業は負けた。

話はそれるが、
今回の講演者は、「イノベーションが大事だ」と強調する人が多くいた。過去のパラダイムシフト、イノベーション定義などを言っている。聞いてて、そりゃそうだ、と思ったけれど何の答えにもなっていない。なんでもいいから、「未来の具体的な形、あなたの考える次のイノベーションはどこからうまれるのか?」ってものを述べてほしかった。

また、日本の「再生」、「原点回帰」とかまだ言っている人もいた。ダーウィンを勉強した方がいい。「強い者が生き残ったわけではない。賢い者が生き残ったわけでもない。変化に対応した者が生き残ったのだ」。過去を反省し、現在に生かすのは大事である。過去の良かった点まで捨ててしまった反省もあるかもしれない。でも、もはや前に進むしかないと思う。

ITを業務効率向上の道具やコマーシャルの道具としてしか見ないのももうやめよう。HPの「aurasma」などおおっと思うモノも出てきている。でも、これだけでは技術拡張の範囲だと思う。イノベーションではない。ただし、次に述べる「音声入力」x「evernote」x「aurasma」の組み合わせでイノベーションは生まれるかも? とも思った。

③商品そのもの
PCやiPhoneを含むモバイル、ネットワークインフラ、Yahooなどのポータル、Googleのサーチ、FacebookSNSのように情報を伝達する手段、方法自体が商品として成り立つ場合である。これらは、情報技術のまさに革新部分であり、世間が「情報の可能性」を新たに認識した時、その時がITにおけるイノベーションであり、パラダイムシフトが起こった瞬間であると思う。

別の言い方をすると、数多あるこのままでは希薄で散乱している情報を、①系統だてて整理する仕組みを作って情報濃度をあげた[yahoo]、②webサイトの中身に加え、サイト間のつながりに注目して情報濃度をあげた[google]、③実名を挙げて責任を持った口コミを活用し、情報濃度をあげた[Facebook]がイノベータなのである。情報のあり方そのものに注目して技術を生み出し、情報圧縮に成功したことが大事なのである。

では、次のイノベーションはなんなのか? 次にデジタル化される情報は? 勝手な予想。

■革新的な情報圧縮技術
人間は、目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる五つの感覚を持っている。目・耳に関する感覚(情報)は、すでにデジタル化された。では他の感覚はどうだろう? 舌・鼻・皮膚は無理だと思う人もいるかもしれないが、間接的に可能で、人間の行動からある程度予想出来るからである。例えば、Amazonのように食料品のサイトで食べ物を買った人が、再度購入したらその商品はおそらく「美味しい」のであろう。味覚の情報は、再度購入するという人間の行動から読み解くことが出来るのである。

舌・鼻・皮膚の感覚は、デジタル化出来ない(センサー開発をして模式的に出来る技術もあると思うがそんなものが実現して何になる?)。でも、人間の行動はデジタル化出来る。もちろん、意味のあるデータは、観測したデータに比較して極めて微小である。意味のあるデータを取るために、多量のデータ(いわゆるビッグデータ)が必要である。たまにビッグデータや高速解析能力そのものがイノベーションという人がいるがボクは間違いだと思う。Hadoopを使ってクラウド上で高速解析することは確かに先進的であるが、情報濃度をあげる方法自体は従来技術の延長で革新的ではない。

私は、「音声入力」x「evernote」x「aurasma」x(目線を含む表情、人間の体勢、GPSなど位置や周辺環境)x(過去の行動履歴、Facebook/Amazonなどバーチャル世界における思考観察)で、意味のあるデータを的確に引き出せる技術の複合技術、プラットフォームが次のイノベーションだと思っている。


■情報の自発的結合
現時点で、人々はバーチャルな世界(SNS)にまでもう一人の自分を置くようになった。人と人のつながりだけ(トポロジー)だけが存在する世界であり、実態は必ずしも必要ではない。バーチャルな空間で交流をする人は仮想空間に遊びに来た現実の友人だけだろうか。仮想空間で存在する人間の代わりをするロボット(仮想人間)は?

SFのような完全なAIを言っているのではないです。バーチャルの世界に集まったビッグデータを背景に、画面上からは区別出来ない程度の(仮想人間)を作ることが出来るかもしれない。自分の今持っている情報、そして、考え方に同期するように新たな情報が提供されたら、人は便利だと思うし親近感を感じて満足する。要は、情報は情報を求めるのであって、現在自分が置かれている情報があらわになると、次にくっつく情報が明らかになり、そしてそれが提供されると飛びつくのである。

情報をハンドリングすべき人間が、情報によってハンドリングされる時代が来るかもしれない。国家や企業の、強力な啓蒙やコマーシャルなどの誘導手段に使われたっておかしくない。ある意味、イノベーション

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最後に、
竹中平蔵」先生について。

人の講演で、感銘を受けたのは「生駒俊明」先生以来です。


あと、
「未来の自分を設定して、現在の自分を反省する」(by中竹竜二)、いい言葉を頂きました。