IT Japan 2012 竹中平蔵氏、講演メモ

基本的にIT-Proに記載の記事がモトです。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120706/407665/

■『ツイッターを持った橋下徹小泉純一郎を超える』(真柄昭宏著、講談社)という書籍を引き合いに、ITの浸透が政治にも大きな影響を与えている現状を指摘。

 “公人”だった当時は、マスコミを通して私の発言が伝わるために、マスコミから批判される時は一方的に批判されるしかなかった。今はTwitterがある。(大阪市長の)橋下徹さんは批判した記者に対して『A記者は不勉強だ』『B記者は会見に来ていないのに記事を書いている』などとTwitterを通じて反撃している。これは新しい現象である。

 そして批評家は、”批評される”ことになれていないので「反撃」に極端に弱い。政治家にとって新しいチャネルであり、今最も有効に使っているのは橋下徹さんである。


■ITは経済にも大きな変化を及ぼしている。

グローバル化とITによる「デジタル革命」が並行して進むことで、デジタルデータが世界中でやり取りされるようになっていると指摘。世界はフラット化している。東京の仕事を沖縄でやっても、中国やブラジルでやっても同じなのだから、コストは安い方に収れんする。

フラット化する力に身を任せたら(何も対処しなかったら)『今日の給料より明日の給料が安い』のは、グローバル化とデジタル革命の当然の帰結である。だからこそ、技術的優位性を保つイノベーションこそ、今の時代に大事である。


■ヨーロッパの経済はしばらく停滞。

ギリシャの問題においてはユーロが暴落しないのが問題。暴落することで一時的に貧しくなるが健全で、次の競争力を生み出す。来年にドイツには総選挙が控えていて、メルケルが大胆な政策を取れない事情もある。しばらく、ヨーロッパの問題は続くであろう。また、各国の金融政策、銀行の基準がバラバラで、各国の金融大臣等が集まって議論を深める機会が無いのも問題。これらの議論の枠組みが出来上がるのにも、しばらく時間がかかるであろう。


ASEANは元気。

グローバル化によって技術と資本は導入可能になり、「人口が多いことはいいことだ」という事を証明した中国。これに続けと、ASEANは今大きな成長を続けている。ただし、ASEANの関係者も一定の成長は出来ると考えているが、先進国へとなるために「中進国の罠」から抜け出ることに大きな関心を示し、模索している。日本が彼らを助けることが出来る、そして我々自身も成長出来るポイントである。


■「変な政治」を止めるだけで、少なくとも今よりずっと良くなる。

 こうした実情を踏まえずに、とにかく『国民の生活が第一だ』といった政治が横行。フラット化したといっても東京は大きな経済圏で、成長のための手立てはいくらでもある。都市間競争力でいえば、ニューヨーク、ロンドン、パリに続くベスト4に入る。税率、規制、都市間アクセスを更なる成長のポイント。

 また、日経平均株価は今9000円で、5年前の半分になってしまった。米国の株価はほぼ5年前の水準を回復しており、経済の混乱が続いている欧州の株価ですら5年前から2割下がっている程度。日本の低い株価は異常値なのに、みんな異常に気づいていないこと自体が問題だ。その背景で、普通では考えられないような経済政策が幾つも行われている。

 具体的に2つの政策がある。

(1) 1つは、「雇用調整助成金」。
“社内失業者”に助成金を出しているケースもあり、見かけ上の失業率は下がっているが、新たな雇用が生まれているわけではない。助成金を止めた時点で失業率が大幅に上がってしまう。

失業率は現在統計上、4パーセント程度であるが、雇用調整助成金で失業していない人は6パーセント、従って実質的に機能していない労働者(失業者)は10パーセントにのぼる。そんな状況で経済が良くなる訳がない。

(2) もう1つは、中小企業の融資返済を猶予する「モラトリアム法」。
借金を返さなくていいというルールが、中小企業のモラルハザードを生んでいる。金融機関にとっては、モラトリアム法の期限が切れた時に不良債権が増える(およそ1.5倍になる)と分かっているので、元気な企業への新規貸し出しに慎重にならざるを得なくなっている。金融機関の活動力低下(弊害)を指摘。


■財源の確保と、PFI、PPP法の活用
公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法を非常に評価。例えば、空港などの施設を民間にリースするだけで、効率とサービスの質が格段に上がり資産価値はすぐに3倍になって、税収が上がる。PFI法を一番適用したいのは道路。でも、肝心の「道路」に関する議論がされずに話が進められている。


■「こんな変な政策が行われていても、今の暮らしができているのだから、日本にはまだまだチャンスがある」