遠藤保仁の記事@サッカー批評(52)

 今の日本代表で代えの利かない選手といえば、遠藤保仁と言われている。確かにトラップ、パスはすごく正確でミスがすごく少ない選手である。では、それ以外に「代えの利かない」ってのはどこにあるか? というと、ゲームをコントロールする能力が今の日本で、突出しているからであると思っている。

 大体ボランチの選手は、試合中攻めに関して以下のことをこなしている。

①前線の選手がスペースを見つけてチャンスと見れば、スルーパスが出せる。
②前線にスペースがない場合はどこから攻めればいいのかを判断してサイドチェンジが出来る。
③そもそも前線にパスを出すために前を向けない状況でも、空いたスペースを見つけて走りこみ、ボールを呼び込むことが出来る。

 遠藤選手は、この「精度」が異常に高い。状況に応じて最適なパスの受け手を選ぶだけでなく、受け取った選手が「状況にあった次のアクション」を取りやすい位置にパスを出している。

 例として、ラウル・ゴンサレスが前線にいたとしよう。ラウルは左足の方が上手いので当然ラウルへのパスはラウルが次のアクションを左足で出来るような位置にすべきだろう。ここで大事なのは、左利きだから左側にパスを出して左足でトラップさせるのが良いという単純なものではなく、次のアクションで左足が活かせるならば、右足でトラップさせてもいいということである。

 状況にあったパスが出せるということは、そのパスには「受け手の周りの情報」を含んでおり、受け手はそのパスにあわせて次のアクションを取れば、自分で判断すべき点が省かれて、より早くより正しい選択が次に出来るようになる。出し手、受け手で意思がボールを通じて繋がり、「チーム」になるのである。左利きの選手に毎回左足でトラップできるようにパスを出せる選手は、パスが上手い選手であって、サッカーが上手い選手ではないってことであろう。

 遠藤選手は、強力なキャプテンシーを発揮して大きな声で指示を出して試合の流れをコントロールする選手ではない。黙々とチームの進むべき方向性をそのボールに乗せて発信しているのである。ボールを受ける周りの選手たちが一番わかっているのであろう、誰が中心選手なのかを。

 、、、知ったかぶって書いてみましたが、今月出ていたサッカー批評(52)の遠藤選手の記事を読んで思ったことを書いたまでです。いいインタビューなので読んでみて下さい。余計なおせっかいかもしれないですが、「ポスト遠藤を目指す柏木陽介選手に特に読んでほしい」、と思ったでごわす。

サッカー批評(52) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(52) (双葉社スーパームック)